『歴史と神戸』347号を発行しました
60巻4号/歴史と神戸/もくじ
特集・史料から読み解くひょうご近世史
谷文晁の「笠置山」について…………………………柴田 昭彦(1)
播磨国加古郡にみる近世の水論・地論………………伊賀なほゑ(10)
―加古郡大西二男家文書を通して―
尾芝静所著『静所一夜百首』について………………三枝 正平(28)
―静所詩の鑑賞を中心にして―
メキシコドル ロマン…………………………………竹村 勝昌(40)
――太平洋循環航路の発見――
【地域から】気になる一冊『山本真蔵日記』
アナール学派の視点で網干の近代を読む……………増田 行雄(47)
暑中お見舞い申し上げます…………………………………………………(53)
『歴史と神戸』の原稿を募集しています………………………………………(52)
――――――――――――――――――――――――――――――
新聞地域版(46、56) 新入会員紹介(27)
表紙・藤田年男
編集後記
江戸時代の絵師、谷文晁の『日本名山図会』の「笠置山在播磨州」は、京都府の笠置山と兵庫県の笠形山の二つの解釈がある。柴田さんはカシミールの画像で、描画地点をJR播但線溝口駅の北北西九〇〇㍍の標高一四〇㍍地点(姫路市香寺町溝口)と特定▼伊賀さんは下西条村と新井郷との水論、隣村中西条村との地論から、近世争論を論じた。明治初期の取水取り決めに発展、地境訴訟は両村にしこりを残し、現在の境目に影響を与えたという▼三枝さんは加西郡出身の江戸後期の詩人の著書『静所一夜百首』を鑑賞。心の奥深い琴線に届く、良質の詩と評価▼江戸幕府は開港で貿易決済にメキシコドルを使った。日本と外交のない途上国のメキシコドルはなぜ交易に使われたのか。竹村さんが解き明かす▼増田さんは長波・中波・短波のアナール学派の視点で日記を読む▼暑中見舞い。毎年変わらない方のお名前に安堵の一方、鬼籍に入られ消えたお名前に時の流れを思う。(大国)
巻頭言
突然の訃報に言葉を失った。神戸空襲を記録する会の前代表、中田政子さんが、六月二十六日に亡くなった。七五歳。誤嚥性肺炎で入院、回復途中に容体が急変したという。神戸空襲を記録する会は、神戸史学会の中心的なメンバーだった君本昌久さんが創立。史学会とともに歩んできた。君本さんのあとを受け継いだのが中田さん。身ごもった母が空襲に遭い、姉は爆風でなくなったのに、母は奇跡的に生き残った。語り継ぐことに使命を感じ行政もできなかった空襲犠牲者の名簿作りを行い、慰霊碑を建立した。野坂昭如の作品の現場を歩く「火垂るの墓を歩く会」には、発足当時から、全面的に協力、ウォークや学習企画に取り組んできた。空襲を記録する会の全国大会を二度招致、記録を残すことのお手伝いをしたことが、昨日のことのよう。忘れません。あなたのこと、空襲のこと。(大国)
« 『歴史と神戸』346号を発行しました | トップページ | 播磨・淡路の城郭絵図特集ー『歴史と神戸』348号を発行しました »